第71回「社会を明るくする運動」5地区合同ミニ講演会

私たち保護司の更生保護活動の中で、メインとなるのは犯罪や非行をした人に対して立ち直りを助ける保護観察という責務です。
対して、当該被害者にはどのようなことが出来ているのか?被害者への支援施策は、法的支援制度が手厚く整えられたとしても、心に負った傷は簡単に癒されるものではありません。

私たち保護司はこれまで何度か被害者遺族の方の講演を聴講してきましたが、更生保護活動に活かすことができたかどうか、自問自答を繰り返しています。
今回、被害者家族の思いとその支援の現状を知ることにより、参加者を含めたディスカッションの中で、被害者支援の現状を識ることにより「更生保護活動のあり方を改めて考えてみる必要があるのではないか?」と考え企画しました。

さて、上記の企画趣旨にご賛同いただいた講師は、
冨名腰 由美子 氏(公益社団法人 京都犯罪被害者支援センター 理事・事務局長)です。
メイン会場の北白川小学校ふれあいサロンからご講演いただきました。

2会場をZOOMで結ぶことから、幾度となくテストを重ね当日を迎えたのですが、講演開始前に映像を流していたメインコンピューターが熱暴走なのか、強制シャットダウンされてしまい、ちょっとあたふたしましたが、定刻の午後2時30分開会されました。

まずご自身が京都犯罪被害者支援センターで被害者支援に携わった経緯を話され、続いて、被害者支援対策についてパワーポイントを使って、「ある日、突然、事件や事故に遭うと、まずどうしてよいかわからない、何が起こったのかわからず現実を受け止められない状態になる。再被害に遭うのではないかと不安にもなる。不眠、食欲の低下など、それまで普通にできていたことができなくなる。

被害者やご遺族にとって最も重要なことは、ひとりではないと思えること、必要な情報が適切に伝えられていること、心身の状態を専門家に診てもらえること、寄り添う人がいること、悲しみや怒りなどの気持ちが出せること。そして、被害者にとって必要な支援の手が、連携を取りながら差し伸べられることである。

京都犯罪被害者支援センターは、犯罪被害に遭って、人や社会に対する不信感から、孤立してしまいがちな被害者が、社会との絆を結びなおし、暮らしを取り戻すことができるように様々なお手伝いをする。しっかりと聴く、適切なところに繋ぐ、さらに寄り添うことを大切な役割と考える。
支援者として第一に心がけなければならないことは、二次被害を与えないことである。被害そのもので傷ついている被害者にそれ以上の傷つきを与えないために、研修はとても重要である。また他機関と連携する際に個人情報の取り扱いを慎重にすることも大切なことである。」とご講演された。

 

最後に「私たちは、いつ事件や事故に巻き込まれるかわからない。社会全体で犯罪被害者を支えることができる世の中であってほしい」と訴えられました。
また、ご遺族の声として「できる人が、できるときに、できることをしてください」というメッセージで締めくくられました。

続いて、サブ会場の元新洞小学校第2会議室に居られる、ゲストパネラーの中江 美則 氏(犯罪更生保護団体ルミナ代表)とのディスカッションです。

 

参加者から「中江氏は被害者家族(※1)でありながら、なぜ犯罪更生団体をやっておられるのですか?」という質問が挙がりました。
中江氏は「ある刑務所から講演依頼を受けて出向いたところ、私に敵意をむき出しにしていた受刑者がいました。ところが最後には私の話を聴いて涙を流してくれました。そのことがあって自分の体験話は犯罪者の更生に役立つのではないかと考えるようになったのです」と応えられました。

※1中江氏は亀岡交通事件の被害者遺族であり、ミニ集会でご講演いただいております。

平成30年8月25日 市原野会館 98名

北部地区社明活動報告


《深まる苦しみ ひろがる傷口》~亀岡交通事件の犠牲者遺族の想い~

 

令和 元 年6月15日 岡崎中学校 300名

浄楽・錦林東山地区ミニ集会を開催。


亀岡集団登校交通事件から7年…
 「深まる苦しみ ひろがる傷口」~ 亀岡交通事件の犠牲者遺族の想い ~

壮絶な経験をされたことをまったく感じさせない訥々した語り口調に、参加者は胸が詰まる思いだったのではないでしょうか。中江氏のパネラー参加によって講演が更に有意義なものとなったのは言うまでもありません。
講演会終了後、元新洞小学校3階にあるサポートセンターで、冨名腰先生と中江父子、講演会参加者の(公社)おうみ犯罪被害者センター事務局の太田牧子氏、(公社)三重犯罪被害者総合支援センター副理事長の仲律子氏を交えて座談会を行いました。

今日を振り返って、犯罪事件にはそれを起こした加害者がいます。加害者には「更生保護法」に基づき、あらゆる方面から支援の手が差し伸べられています。しかし、その対極には被害者とそのご家族が居られます。被害者支援に携わる方々とは立ち位置は異なりますが、被害者やそのご家族の心情に少しでも思いを寄せることのできる保護司として、更生支援に取り組んでいきたいと思います。

文責 堀内寛昭・川見善孝

写真 村上ますみ・中林五月・久保優佳・川見善孝